knolにはWikipediaとは別次元の専門性を期待する
常日頃から「Web上に『信頼できる百科事典』があればいいな。」と思っているので、このサービスの行く末は大いに気になる。
『信頼できる百科事典』が「Wikipedia」ではないと考えている私にとっては。
Google版Wikipedia? 知識共有ツール「knol」をテスト : ITmedia News
Googleがテスト中のknolでは、誰でも特定のトピックについて解説ページを作ることができる。執筆者は広告を載せて収入を得ることもできる。
但し、実のところは、何か調べ物をする際に「Wikipedia」の内容を信用する確率は90%以上である。
それでも、「Wikipedia」が百科事典の最終形かどうかとなると、そうは言えない。
それは、表現の大半がテキストに限られているからである。
表現手段に限れば、現在のWikipediaは紙の百科事典と何ら変わりはないとも言える。せっかくのWebなのだから、豊富な画像に加えて、動画や音声などを駆使することによってさらに理解しやすい百科事典が作られるべきだという発想はごく自然なことだと思う。
ならば、将来のWikipediaが動画や音声を採り入れて発展していくかと言えば、現段階では怪しい。テキストや少量の画像までは編集できても、動画や音声を自由に編集できる人はまだまだ少ないからである。誰でもが編集に参加できると言うには、現在の動画や音声の編集環境は追いついていない。
そのような、今後Wikipediaが苦労しそうな領域に対して、knolが新たな解を提示する可能性は大きい。
このサービスは「knol(unit of knowledgeを表す)」と呼ばれ、特定のトピックをよく知っている人に、そのトピックに関して信頼できる解説を書いてもらうことが目的という。
knolは実際には、特定のトピックについての解説が書かれたWebページ。そのトピックを初めて検索する人が最初に読みたいと思うような内容になるという。Googleは、科学や医療、地理、歴史、エンターテインメント、製品情報、ハウツーまで、あらゆるトピックをカバーすることが目標だとしている。これらから予想できることは、まず、特定のトピックに熟知した執筆者が、本人の考える通りの内容で、公開できるということである。原則として、内容に関して第三者からの反論を受け付ける必要がないため、執筆者にとっては余計なノイズを気にせずに公開できる。
また、真に熟知した執筆者の中には、既に、動画や音声も含めた豊富なコンテンツを所有している場合も多いはずであり、表現力豊かな内容で公開するには理想的であると考えられるのである。
記事の最後もこのように締められている。
Googleは、このプロジェクトの主眼は執筆者にスポットライトを当てることだと説明している。書籍ならば執筆者の名前が表紙に載り、記事ならば署名欄 があるが、「Webは執筆者の名前を強調する強力な決まりがないまま進化した」と同社は指摘、執筆者を知れば、ユーザーがWebコンテンツをより活用する 役に立つとしている。「knolに、執筆者が名声を賭けた意見や視点が載ることを期待している」すなわち、動画や音声の表現力の向上が期待できるだけではなく、いわば「本当の」専門家がknolを執筆する状況が生まれるということである。どんな分野でも、誰でもに編集されてしまう可能性のあるWikipediaにその分野の第一人者が書き込もうと思うだろうか。knolはそこに着眼しているのである。
GoogleはWikipediaの遥か上を見据えたものとしてknolを育てていくはずである。大いに期待したい。
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